お退きなさい。邪魔ですわ。
・・・ああ、ごめん。ちょっと考え事してたものでさ。
考え事なら椅子に座るかどうかしてからしなさいな。
そうだね。気を付けるよ・・・って、それ、返却図書?
そうですわ。飯嶋先生が職員会議だかなにかでお忙しいので、頼まれましたの。貴方も、悩む暇があるなら手伝ったらどうです?
職員会議って・・・司書の先生でも参加するんだ。・・・はいはい、お手伝いしますよ。
考え事は本を片付けながらでもなさい。
うーん・・・ねえ、君は誕生日に何を貰ったら嬉しい?
わたくしに聞く位なら、他の男子に聞いたらどうですの?わたくしは男子の好みは分かりません。
違うよ。そいつらにあげるのなら君には尋ねない。あげるのは、先輩。
せんぱい?
そう。もうすぐ誕生日なんだけど、何あげようかと思って。やっぱり本かな。どんな本が良いと思う?って・・・何?僕何か拙い事でも言った?そんな顔して・・・。
お待ちなさい。え、先輩は、もうすぐ誕生日なのですか?もうすぐ春休みというのに?
うん。あの人学年で1番の遅生まれだから。全校でも1位2位を争うんじゃない?あれ、知らなかった?
何と言う事!全く知りませんでしたわ!
ふぅん。ついでに言うと、それ、その本はも一つ向こうの棚。
お黙りなさい!ああ、何を差し上げようかしら・・・。
いや、だからそれを僕も相談したんだけど・・・。
*
少女は、汚れるのも構わず土の上に寝転ぶ。盛り上がっている木の根と根の間にすっぽりと収まる。見上げると、大きく茂った葉の群衆が、ざわざわと音を立てていた。桜の木ほど、消えてしまう樹木も珍しいと思う。春にだけ、現れる樹木。この木が桜だと知っている少女でさえ、時々他の木と区別が付かなくなる時がある。木漏れ日がちろちろと輝くのを少女は、眩しげに見上げていた。ころり、と横になり身体を小さく丸める。その状態のまま、しばらく眼を閉じている。静かに、息を吸って、吐いて。
もう一回吸った所で、彼女は、懐かしい香りを見つけた。だが、少女は眼を開けない。例え、自分の右と左に、誰かが座った様な気配がしても。誰かが自分の顔を覗き込んでは、くすくす笑い声を上げたりしていても。
眼を、開けてはならないのだ。
右に座っているのは、ミントの香りを纏った少年。
左に座っているのは、バニラの香りを纏った少女。
その二つが混じり合い、まるでチョコミントアイスのように甘い香りが、少女の鼻孔を擽る。
良い香り。
まだ、その香りを身につけてくれるのなら。
少女が再び眼を開けた時、両隣りには誰かがいる筈もなく。少女が土に付けている右耳が、微かに響く笑い声を捉えただけだった。
*
12/19 21:53
from 偲ちゃん
sub (non title)
お姉さん、うちのお母さんにも話聞く?
聞くなら、あたしからも言っておこうか?
12/20 22:06
to 偲ちゃん
sub (non title)
返事遅くなってごめんね。
偲ちゃんのお母さまにもお話は伺うつもりだけど、偲ちゃんは特に何も言わなくていいよ。
こちらからきちんとお願いするから、大丈夫。
でも、気にしてくれてありがとう。
12/20 22:10
from 偲ちゃん
sub Re:
りょーかい。
そだ、言っておきたい事あるんだけど。
うち、シングルマザーだからね。母一人子一人。
父親、も、行方不明。
でも、これゎ、多分浮気して相手の女と一緒になったんだと思う。
とりあえず、お母さんが変な事言うかもだけど、気にしないで。
12/20 22:17
to 偲ちゃん
sub Re:Re:
・・・?
よく分からないけど、分かった、かな?
お伺いする時は、一応偲ちゃんにも連絡するね。
12/20 22:19
from 偲ちゃん
sub Re:Re:Re:
そうしてもらえると嬉しいかな。
そしたら、あたしゎ適当に外で時間つぶしとくし。
ママンの機嫌取りでもしておくさ(笑