買い物から帰り、もうすぐ春だなと思いつつ玄関で靴を脱ぎ、わしゃわしゃと音を立てるキャベツやらなんやらが入った袋を持って光さすリビングに行くと、そこで見知らぬ人が昼寝をしているのを見た時、あなたはどうしますか。
 大抵の人が思考停止になるであろうそんな状況の中、僕もご多聞に漏れず、暫しぽかんと、気持ち良さそうな寝顔を浮かべている女性を見つめてしまった。ええ、ええ!?誰、誰ですかあなた。少し丸まった格好のその人のお腹の所には青柳がくるりと丸まって、すぃすぃと寝息を立てている。いやいやいや、青柳さん。あなたは何をそんな暢気な。猫又としてのプライドは何処にやった。それじゃあただの猫です。
 僕がこれからどうしたら一番面倒事が少ないかを考えていると、リビングとキッチンを隔てるガラス戸ががらりと開けられる。思わず身を固くし振り向いた僕に、湯気の立ったカップを持ったその人は、「お帰りなさい」と暢気に声をかけてくる。その人が誰か認識した瞬間、僕は思わずその場に座り込んだ。
 「・・・・・・秘乃姉。何人の家に勝手に上がり込んでるんですか・・・・・・」
 「あら、ごめんなさい。久々に七竈の顔が見たくなったものですから」 
 僕の些細な非難に、いけしゃあしゃあと笑って答える女性。平然と人の家に上がり込み、あまつさえ勝手にコーヒーを飲んでるのは、誰であろう、僕の従姉だった。何かもう、疲れたよ・・・・・・。

 「それで、秘乃姉。説明して下さい」
 「何をです?」
 あれから数分後、僕と秘乃姉は畳に正座し、茶卓を挟んで向かい合っていた。いや、正しくは正座をしていたのは僕だけだ。向かい合ってすらいない。秘乃姉は見知らぬ女の人のお腹の所にいる青柳にちょっかいを掛けている。あの、秘乃姉、それ妖怪なんですが。猫に見えても、一応怖い妖怪なんですよ。偶にうっかり人も食べちゃいそうな妖怪なんですけど。
 いや、それ以前にだ。それ以前に重要な事を聞かねばなるまい。
 「・・・・・・秘乃姉、貴女、死んだんじゃないんですか」
 「あら失礼な。勝手に殺さないで下さいな」<>br  くすりと笑うその人に、いやいやいやと思わず突っ込む。あの時は親戚中大騒ぎになったんですけど。まだ幼かった僕ですら覚えているくらいだと言うのに。
 秘乃姉と僕の歳の差は8歳。あの事件が起きた時、僕はまだ10歳だった。秘乃姉と双子のもう一人とは、僕はよく遊んでもらっていて僕自身2人に懐いていたから、すごく哀しかった事を覚えている。しかしそれから月日が経ち、失礼だがすっかり思い出となってしまっていた。だが、今、僕の目の前に居るのは、紛れも無くあの秘乃姉だ。なんか見知らぬ人もいるし。
 「・・・・・・分かりました。秘乃姉の事は良いです。でもせめて、そこの人だけでも紹介して下さい」
 未だ青柳のお腹を撫でている秘乃姉ににじり寄りながらそう言う。すると、予想外の所から答えが帰って来た。
 「ああ、そこで寝てるのは北川有栖さん。僕らと同い年」
 一瞬心臓が止まるかと思った。秘乃姉の方を見ていたせいで注意が薄くなっていた、僕の後ろの茶卓、そこに肘をつきながらやっぱり暢気にコーヒーを飲んでいる人が居る。嘘だ。いつのまに。だってさっきまで誰もいなかったのに。
 「ひひひ、密兄!」
 「久しぶり、七竈。相変わらず元気だね」
 思わず腰を抜かす。見知らぬ人の足元で口をパクパクしているだけの僕に、密兄は酷く楽しそうな笑みを浮かべ見てくる。うわぁ、この人全然変わって無い。密兄、眼は笑ってないんですけど。
 だがそんな僕の様子を無言で見詰めた後、密兄は特に僕についてコメントすることなく、見知らぬ女の人に声をかけ始める。
 「アリス!起きて!」
 するとその声に反応して、女の人がもそもそと動き始める。青柳がそれに釣られて起き出し、くぃーと伸びをし、さっさと何処かへ行ってしまった。女の人は、しばし寝返りを打った後、ぱちりと目を見開き、偶々足元に居た僕と眼が合う。まだ半分夢の世界なのか、瞳がとろんとしている。全体的に色素の薄い人だ。色んな意味で真っ黒な密兄や秘乃姉とは正反対である。
 そのアリスさんは僕を暫し見つめた後、もぞもぞと丸まりながら足と頭の位置を入れ替え、やはり再び僕を見ている。より至近距離となった事で、僕は何故だかドキドキしてきた。この人、一体何処を見てるんだろう。
 「あ、あのー・・・・・・」
 「・・・・・・。・・・・・・密、五月蠅い」
 寝ぼけてる、寝ぼけてるよこの人!ぼんやりとした顔で僕の顔に手を伸ばし、撫でたり引っ張ったりするその人は、気持ちよく寝ていた所を起されて酷く不機嫌な様だった。しかし僕はよりによって密兄に間違えられた事、そんでもって見知らぬ女の人から顔を弄られている事についていけず、暫し成すままになる。後ろで大爆笑している腹黒双子が心底うざい。いや、いい加減助けろよ。しかし僕の眼下でうつらうつらとしている人にこの苛立ちをぶつける訳にもいかず、とりあえず苛々オーラを後ろ方面限定に放出しておく。すると流石にやりすぎたと反省したのか(そんな殊勝な心をあの二人が持っている訳も無いとか思ったりするが)、密兄が声をかける。
 「アリス、僕はこっち」
 ぱんぱん、と手を鳴らして密兄がアリスさんの注意を引く。するとその音を辿ってアリスさんが顔を動かし、茶卓についている密兄を見つけ、そして僕を見て、首を傾げた。
 「・・・・・・あら?」
 「アリス、起きてこちらにいらっしゃい。飲み物は何が良いかしら。お菓子もあるのよ」
 秘乃姉が穏やかに言う。いやだから、人の家で勝手にコーヒーやら紅茶やらを淹れないで下さい。せめて家主の許可ぐらい取ってもくれても良いんじゃないでしょうか。だがそんな事を言っても笑って流されるだけだと言う事は遠い昔の経験上知っているので、僕は取りあえず溜息だけを吐いておく事にした。
 目を擦りながらアリスさんは一旦立ち上がり、そしてまたしゃがんだ。真っ向から僕の顔を見つめてくる。ええ、何この人。
 「・・・・・・貴方、誰ですの?」
 今更ですか。さっきまで散々僕の顔を好き勝手しておいて、今更ですか。
 「え、初めまして。斎藤七竈です」
 「斎藤・・・・・・?密や秘乃の弟ですの?」
 「あ、いえ、従弟です」
 この人、何か緊張する。紅茶味の飴を溶かした様なその瞳は、一体どんな世界を見ているんだろう。
 「従弟・・・・・・。先程は密と間違えて変な事をしてごめんなさい。男性だったから早とちりしましたわ」
 どんな早とちりだ。僕は突っ込みたかったが流石にそれは拙いと思いぐっとこらえる。今日買い物から帰ってこの方、周りの人に振りまわされぱなっしだ。これならまだ蓮見の方が扱いやすい。釈然としない思いを抱えながらも、アリスさんが洗面所の場所を尋ねてきたので丁寧に教える。女の人は大変だな。
 アリスさんが眠気眼で空を歩く様な足取りで廊下に消えた後、僕は密兄ににじり寄り、ひそひそ声で尋ねる。
 「な、密兄。アリスさんって密兄の彼女?」
 コーヒーをゆうらゆうら揺らしていた密兄が、ぽかんとした顔で僕を見てくる。だって、密兄と間違えてアリスさんが僕にしてきた事は凄く二人の間が親密だから出来る事であり、彼女の態度を見るに絶対あれが日常的に行われていて、あの、あの他人なんて顧みない密兄がそこまで許すって事は。ちょっと下世話だけどそういうことなのかと思うのも仕方ない。
 だがぽかんとした顔の密兄は、暫ししたのち大爆笑しやがった。密兄、何か消えてた数年間の後に色々吹っ切った?キャラが著しく変わってる気がする。
 「かのっ・・・・・・彼女!?七竈、凄い邪推だね」
 息も切れ切れに言ってくる密兄の言葉も中々酷いと思う。じゃ、邪推って。もっと他にましな言い回しもあっただろうがこのやろう。
 アリスさんの分の飲み物が入ったカップを持って秘乃姉がリビングにやってくる。笑い涙を拭いている密兄を見て、秘乃姉が首を傾げた。
 「おや、珍しいですね。密がそんなに笑ってるなんて。何か面白いことが有りましたか?」
 「ああ、秘乃。いや、七竈がアリスの事を僕の彼女だって言ってきたんで。ちょっと笑ってしまいました」
 あれ、と僕は少し違和感を覚える。しかしそれは捕まえる前に逃げてしまい、僕は首をひねりながらも秘乃姉の反応を待つ。
 「彼女・・・・・・それはまた想像力豊かですね」
 この双子の口の悪さは何とかならないのだろうか。心に連続で、しかも重い一撃を続けて二回も受けた僕は結構ブロークンハートだ。
 だが笑いも収まった双子がふむと顎に手を当て楽しそうに笑う。こう言う時二人はそっくりだと思う。二卵生でもここまで似るものなのか。密兄が秘乃姉と顔を見合せながら言う。
 「ああ、でも、アリスはどちらかと言うと、僕と、」
 「私、二人の恋人でしょうかね」
 うぇ、と思わず声を漏らす。どういう関係だ。もうあまり深くは聞きたくは無い。この二人、外見は一応大人にはなってるが、中身は全然成長してない。むしろ性質が悪くなったと言うか。最悪だ。災厄。どちらもあってる。
 「・・・・・・わたくしを呼びまして?」
 からり、とガラス戸を開けてやってきたのはアリスさんだ。寝ていて乱れていた髪もきちんと手ぐしで整えられ、カチューシャ風に三つ編みで巻いている。この人本当に日本人だろうか。髪の毛やら全体の色素の薄さが半端無いのだが。僕はどちらかというと密兄に似てる方なので、真っ黒くろすけで日本人万歳って感じだ。
 しかしまぁ、この双子アリスさん大好きだな・・・・・・。その優しさを消費税並のパーセンテージで良いから僕にも与えてくれたなら良いのに。
 「・・・・・・でもまぁ、七竈が元気そうで何よりだね。どうしてるかと思ってたから」
 「そうですね。ちょっと心配もしていたんですよ」
 七竈は、少しベクトルは違ったけど僕達と同じだったから。ね、と笑い合う双子と、我関せずのアリスさん。そしてきょとんの僕である。こんな人たちと同じとか僕としてはあまり嬉しくは無いのだが。それに僕はこの人達程はぶっ飛んでは無い、つもりだ。
 だが目の前の双子はそれ以上の説明はせず、ただにこにこと僕を見て笑っている。ちょっと気恥ずかしくなって、僕はそっと目を伏せた。穏やかな沈黙。
 そしてそれをぶち壊すかのような騒音@玄関。
 なにやら騒いでるのは確認するまでも無い。あいつだ。あのやろ、タイミング悪っ。りんごーん、とチャイムが連続で鳴らされ、秘乃姉が「おやまぁ」と零した。本当におやまぁだよ。
 「ちょ、ちょっと行ってきます!」
 頑張れー、と間の抜けた応援を背に受けつつ、慌てて玄関に向かう。木製のドアの向こう、騒ぐ声に盛大に苛立ちをこめて、素晴らしい勢いでドアを開けてやった。丁度ドアの前に居たらしい人物はクリティカルヒットしたらしく、僕が出ると顔に手を当て蹲っている。ざまぁ。
 「・・・・・・やぁ、蓮見」
 「なぁ、何で会って数秒なのに早速機嫌悪いんだよ!俺何もしてねぇよ!?」
 「ああ、お前の存在自体が生理的に無理だから」
 「うわぁ存在否定されちゃったー・・・・・・」
 顔を摩りつつぼやいている蓮見を取りあえず入れてやる。こんな迷惑人物、外に出しておくと近所の人に迷惑だ。
 僕が舌打ちをしながらも扉の鍵を閉めていると、もう復活した蓮見がさっさと靴を脱ぎ、廊下を歩きだす。このやろ、ちったぁ挨拶ぐらいしたらどうだ。まぁもう今更な話だが。
 「蓮見、おま、今お客さん来てるんだって」
 「あ?何だよ、彼女か?」
 「違うし、黙れ」
 背中にグーで一発。何やら蓮見が噎せているが知ったこっちゃない。こいつが悪い。だが蓮見は何やらぶつぶつ言いながらも、さっさとリビングに辿り着き扉を開ける。すると同時に、中から人が飛び出してくる。淡いベージュのパーカを翻して僕達の横を通り過ぎたその人は、一瞬僕達を見て目を見開き、そして少し哀しげな顔をしてそのとろりとした瞳を伏せた。

 あ。

 一瞬のその接触に僕が反応する前にその人はぱたぱたと横を通り過ぎてしまう。慌てて僕が振り向くと、真っ直ぐな廊下の後左に折れる角の所でグレイのTシャツを着た腕、それに連なった手が何かを待ってるように差し出されてる。ぱたぱたとベージュのパーカのフードが揺れ、そして彼女が手を掴んだ瞬間。
 ふっと、ベージュのパーカもグレイのTシャツも消えてしまった。それはもう、音も無く。それが自然であるかのように。
 「・・・・・・何だよ、客なんて来てないじゃねぇかよ」
 「え。いや、おま、さっき人が通ったじゃん」
 は?と言う風に蓮見が僕を見る。蓮見が見てない。僕が見た。蓮見が見えず、僕が見えるもの。
 「嘘だろ・・・・・・」
 その結論は、到底信じられるものでは無かった。だが同時に、あの双子、そして彼女なら、まぁあり得るかもしれないと、ほんの少し思う。
 結局、あの双子は僕に何を言いに来たのだろう。自分達の様になるなよ、って事だろうか。それとも。

 もしかしたら、意外とこの世界から逃げても何とかなるって事を言いに来たのかもしれない。

 だから、心配するなってことだろうか。あの双子の事も、そして、この僕の事も。難しい。昔から、あの双子は僕にやたらと深い言葉をかけて惑わしてくる。会うたびに僕はあの双子に色々言われたりされたりして疲労困憊になったものだ。そんなまだ小学生の従弟に明らかに不釣り合いな話を振ってくる。僕がきょとんとしていると、二人は笑って僕の頭を撫でたものだ。それがまた、子供扱いされてるようで癪だったが。
 ああ、でも。僕が人では無いモノを視える事を、あの双子はきちんと信じてくれていた。何処までも現実的な癖に、僕が河童の話をしようが、幽霊の話をしようが、笑わず聞いていてくれてたものだ。相槌を打って、時々コメントして。
 うん。だから、僕はあの従姉弟達が、実はとても好きだった。
 次はいつ会えるだろうかと思いつつ、僕達はリビングに入る。蓮見が何やら言ってるのを右から左に受け流す。蓮見君、空気を読むと言うスキルを早めに見つけたほうが良いよ。僕は相も変わらずな友人に内心溜息を吐く。
 「・・・・・・ん、七竈、その袋何?」
 え?と蓮見が指さす先を見ると、茶卓に乗っているちんまりとした紙袋。白地に赤で何やらロゴが入っている。何じゃい、と思って袋の口を止めてあるテープをはがし、中を覗き込む。綺麗に包装された箱が入っていて、中身はどうやらクッキーかなにかの様だ。成程、さっき秘乃姉が言っていた「お菓子」はこの事を指していたのかもしれない。自分達で持ってきたものを自分達で食べるつもりだったのかよ。いやまぁ、はいって渡されたら僕もじゃあ皆で食べようって開けて4人で食べたろうから変わらないのかもしれないけど。
 「お、ほれ、何かカードが落ちてきたぞー」
 蓮見が文面を見ない様に裏返して渡してくる。そう言う所だけ妙に気が回る奴だ。
 紙袋と同じ白いカードに、黒いインクで書かれていたメッセージ。『お菓子、お友達とどうぞ。これからも元気でね』『皆によろしく』『にゃー。あの黒い猫、わたくしが欲しい位ですわ』。秘乃姉、密兄、アリスさんの順番だろうか。それぞれの筆跡は見ていて本人の性格を表している様に見える。そしていつの間に書いたのだろうか。まぁあの人達は完全に時間軸から外れてるみたいだし、いつ、というのはあまり関係が無いのか。
 「七竈、裏にも何か書いてあるけど」
 「え?ああ、本当だ」
 ぱっと裏返すと、カードの中心に確かにメッセージがあった。何だ?と思って見る。
 「んー・・・・・・?この字はアリスさんからか。えー、っと?『貴方は、』?」

 「貴方は、真実を知る事を恐れてはいけませんわ。多くの余計なものに、惑わされてはいけません」

 世界はその時確かに動きを止め、僕の後ろに誰かが立った。
 僕の直ぐ後ろから唐突に響いた、鈴を転がした声に、思わず振り返る。一瞬ぶれる景色の中、視界の端にベージュが掠め、しかし僕が後ろを見ると、もう誰もいなかった。いつも通りの、我が家のリビングである。日常が、きちんと転がっている。
 思わず流れた冷や汗を拭いながら、右手に持っていたカードを見つめる。一体、どういう事だ。どういう意味だ。アリスさん、もう少し分かりやすいヒントを下さい。しかしそんな僕の中の混乱に誰も助け船は出さず、いつの間にかやって来た青柳が、なぉ、と小さく鳴いて僕を見た。なんだろうね、青柳。あの人達は引っ掻き回すだけ引っ掻き回して。全く迷惑な客人だ。
 僕は少し深呼吸をして、座りなおす。蓮見が持ってきたらしい雑誌を暢気に見ている。流石、何も感じないキングだ。どうやら先程の声すら聞いてないらしい。
 「・・・・・・蓮見、菓子食う?」
 「お、やった。食う食う!」
 蓮見が雑誌を放り出し、がさごそと箱の包装を外し始める。僕はその様子に若干の清々しい苛立ちを感じながらも、飲み物を準備するべく台所へと向かった。
 お菓子は、有名店の、クッキーとチョコの詰め合わせだった。






 おかえり。

 おかえりなさい。

 お待たせして申し訳ありませんわ。

 構いませんよ。それより、アリス、貴女があんなに七竈に声をかけるとは思いませんでした。ちょっと意外ですね。

 ああ、僕も思いました。アリスにしては珍しいね。

 そうですわね、わたくしも余計な事はしたくありませんでしたが・・・・・・。流石に、お二人の従弟ですもの、放っておくのは可哀そうかと思いましたの。

 おや、アリス、君は何を見たんだろう。

 ふふ、内緒ですわ。

 あら、密、やられてしまいましたね。さて、行きましょうか。

 そうですね。次は何処に行きますか?

 あ、わたくし、行きたい所が有りますの!